弁護士さんは社労士の仕事をできるけど、行政書士さんはできることが限られる【業際問題】
社会保険労務士法詳解がおもしろくて、ときどき読んでいます。今日はその中から、一つ紹介します。
弁護士さんは社労士の仕事をできる
社労士法27条で業務の制限が規定されています。
(業務の制限)
第二十七条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
ただし書き以下の解説がおもしろかったです。「他の法律に別段の定め」の例として、弁護士さんのことが書いてありました。
弁護士法三条では、「弁護士は、当事者その他関係人の依頼・・・によつて、訴訟事件、非訴訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」と定めてあり、ここにいう「法律事務」とは法律に規定する事項に関連する事務万端を包含するものと解されるから、弁護士が、その職務上報酬を得て法二条一項一号から二号までの事務を行っても、法令に基づく正当な行為として本条の制限の対象とならない。
社会保険労務士法詳解 437頁(赤太字筆者)
弁護士さんは社会保険労務士となる資格を有する者(法3条2項)でもありますから、当然ですよね。
行政書士さんの場合
行政書士さんも社労士の仕事の一部をできる(場合がある)のですが、そのあたりはちょっと複雑な言い回しで書いてありました。
なお、行政書士の場合も、昭和五五年の「行政書士法の一部を改正する法律」の附則において、「この法律の施行の際現に行政書士会に入会している行政書士である者は、当分の間、この法律による改正後の行政書士法第一条第二項の規定にかかわらず、他人の依頼を受け報酬を得て、社会保険労務士法(昭和四十三年法律八十九号)第二条第一号及び第二号に掲げる事務を業とすることができる」ものとされていることから、昭和五五年九月一日現在に行政書士会の会員である行政書士に限ってその限りにおいて、本条の適用を受けないことになる。
ここでは、法二条第一号及び第二号に掲げる事務と規定されているので、当然、一号の二(提出代行)、一号の三(事務代理)及び一号の四から一号の六(紛争解決手続代理業務)の事務は含まれない。
社会保険労務士法詳解 437頁(赤太字筆者)
「から~~まで」と書かずに、「及び」と書くことで、行政書士さんには提出代行を制限しています。これには深い業際闘争(←私が勝手に名付けた)があるらしく、こんな↓リンクを見つけました。
リンクが切れたときのために軽く書いておきますが、月刊社会保険労務士平成4年2月号に社会保険労務士制度における提出代行と行政書士の記事が掲載されていたようです。
そこでは、
従って、当時行政書士が労働社会保険諸法令に基づく申請書等を関係行政機関に提出していた行為は、法第2条第1項第1号の2の提出代行ではなく、事業主等の使者として持参していたのにすぎないものである。
とまで書いてありまして、びっくりしました。使者ですか。天下の国家資格(行政書士)を使者扱い・・・。
行政書士さんと社会保険労務士とは、もともと行政書士さんがやっていた業務を社会保険労務士が独占するようになった経緯があり、あまり仲が良くないのかな??と思いました。
雇用保険の照合省略は弁護士さんでもできるか
雇用保険の照合省略と言うのは、あらかじめ当局に届け出て承認を受けていれば、各種の書類提出の際、添付書類を簡略化できるという制度です。
社労士と、企業と、労働保険事務組合が利用しています。
社労士の場合は17条の付記と呼ばれています。
問題は、弁護士さんにもこの照合省略ができるかです。
17条の付記自体は社労士が行うものなので、当然17条の付記は弁護士さんにはできないでしょうが、照合省略ならば弁護士さんにできても不思議ではないような・・・・。
弁護士さんでもあらかじめ照合省略の申請を出して承認されていれば、省略できるのかもしれませんが、今回そこまでは調べていません。
この件に関して、Twitterにおもしろいツイートがありました。
そうなんですか。社労士の場合、弁護士として社労士法2条1項1号及び2号に規定された社労士の業務を行うことができます。但し、社労士法17条の付記で申請書類の添付書類、出勤簿・労働者名簿・賃金台帳の「法定三帳簿」を省略することは、弁護士にはできません。(続く)#社労士 #社労士試験 https://t.co/9couSjF3hf
— 尾鼻則史@特定社会保険労務士・修士(法学) (@obanano) 2022年5月1日
それが理由かどうかは定かではありませんが、弁護士であれば、無試験で都道府県社会保険労務士会に社労士として登録できるようになっています。実際、社労士登録されている方は大阪会でもおられます。#社労士 #社労士試験
— 尾鼻則史@特定社会保険労務士・修士(法学) (@obanano) 2022年5月1日
ほほう!大阪には社会保険労務士会に登録している弁護士さんがいるとな!
という訳で、群馬社労士会でもいるかどうか調べてみました。
高崎支部で検索し、あいうえお順でトップに出てきた方が弁護士資格のある社労士さんでした。