人を雇うことのリスク
今後開業したとしても、人を雇うつもりはないです。
なぜなら、大変なリスクを背負うからです。
勤務社労士として働いてきて、人を雇うことのリスクをさんざん見てきました。
経営者の方の中にはそのリスクを全く把握していない方もいて、まるで人を使い捨ての何かのように雇ってはトラブルになることを繰り返していました。
人を雇った場合、どのようなリスク(ないし、コスト)を負うか?
まず、給与計算をしなければなりません。
そのためには、勤怠管理も必要です。
残業させるなら、労使協定をして36協定届も提出しないといけないでしょう。
1人でも雇ったら、労災保険の届出が必要です。労災保険の保険料は、けっこう高いですよ!年に1回、1年間分の給与を合計して労働局に届け出るというめんどくさい仕事も増えます。
就業規則は、10人未満なら不要ですが、ある程度ルールを決めないといけないでしょう。適当な時間に来て適当な時間働いたら、適当な時間に帰っていいよという訳にもいかないですから。
労働契約は口頭でもOKですが、書面で交わすのが後々のトラブル防止に有効でしょう、そうすると、労働契約書を作成しないといけません。1部だけではなく、本人と会社用に2部作成が必要です。
まじめに働いているか、さぼっていないかを気にする必要も出てきます。
そもそも仕事を教えないといけません。
仕事を覚えて一人前になるまで、人にもよるでしょうが、私が見てきた中では最低でも1カ月、全くの新人ですと1年近くかかっていました。中途採用者でも2年経っても全然仕事を覚えない、ローパフォーマーな人がいて閉口したことも。
その間、売り上げが減ったとしても、給料は支払わないといけません。
ここまで時間をかけて、手間暇をかけても、やめるときは圧倒的に労働者有利です。
労働者側から退職の意思表示をする場合と、使用者側から解雇の意思表示をする場合とで、現行の日本の法律では使用者側に厳しい制約があります(民法627条、労働基準法第20条、労働契約法第16条など)。
今回私は退職の意思表示を5月にし、6月で退職することができますが、使用者側にしてみれば新たな人材を配置する前に私にやめられてしまうので、業務の滞りや、新たに人を採用した場合にかかる教育コスト、その人が仕事を覚えて独り立ちするまでにかかるコスト、募集そのものにかかるコストなど、私がやめなければ発生しなかったであろう出費を強いられます。
人件費副費のコストもあります。
大昔、まだ労働者がどんどん増えていた頃(高度成長期)、人件費副費は人件費に占める割合は8%だったとのことです。
ところが、現在は20%を超えます。月給15万円の労働者を一人雇ったとして、会社が支払う給料は15万円ですが、そのほかに社会保険料、雇用保険料などの会社が負担しなければならい公費が約3万円ほどあるのです。
人を雇っても、全然いいことないですね!
社労士なのに人を雇ってもいいことがないなんて、矛盾したことを言っているような気もしますが、人を雇うからには覚悟が必要だということを強調しておきたいのです。
あまりにも、安易に人を雇ってトラブルになる社長が多すぎます・・・。